建築家の仕事は、建物を設計するところまでなのでしょうか。あるいは、建築で培った思考や方法は、地域の課題や人々の関係、社会の仕組みそのものへも広げることができるのでしょうか。
日建設計・設計グループ代表の建築家、羽鳥達也氏を迎える「KENCHIKUセミナー vol.12『建築はどこまで届くのか ─ 現実と実践から見える新たな射程 ─』」が、2026年10月8日(木)18:30より東京・新川の建報社セミナールームで開催されます。参加は無料、定員40名の事前申込制です。
羽鳥氏は、ソニーシティ大崎(現NBF大崎)やコープ共済プラザ、TOYOTA WOVEN CITYなど大規模な建築・都市プロジェクトの設計に携わる一方、近年では地域住民・行政・企業とともに地域の持続可能な仕組みを育てる「Community Driveプロジェクト」など、建物の設計だけには収まらない活動を展開しています。今回のセミナーでは、そうした近年の実践と建築を取り巻くさまざまな状況を手掛かりに、「建築」が社会のどこまで届きうるのか、その新しい射程を考えます。
羽鳥達也氏は1998年、武蔵工業大学(現東京都市大学)大学院を修了後、日建設計へ入社。専門は建築意匠設計で、現在は同社の執行役員・設計グループ代表を務めています。
これまでの主な作品には、神保町シアタービル、ソニーシティ大崎(現NBF大崎)、桐朋学園音楽部門調布キャンパス1号館、コープ共済プラザ、TOYOTA WOVEN CITYなどがあります。日本建築学会賞(作品)、日本建築家協会新人賞、日本建築家協会環境建築賞最優秀賞をはじめ、国内外で数多くの賞を受賞してきました。
その代表的な取り組みの一つが、地域の移動課題やまちづくりを住民・行政・企業とともに考える「Community Driveプロジェクト」です。2024年度に富山県黒部市から始まった取り組みは、その後広島県福山市へ広がり、2026年度には千葉県市原市、兵庫県豊岡市、島根県松江市も加わっています。
建築設計では、敷地を読み、そこを使う人を考え、複数の条件を整理しながら一つの空間へまとめていきます。
予算、構造、設備、動線、法規、周辺環境、利用者の要望。それぞれ異なる条件を一つの答えへと調整していく行為は、建築設計の重要な仕事です。
しかし、その考え方を建物より大きなスケールへ広げれば、地域の課題に対しても別のアプローチが見えてきます。
今回のタイトルにある「建築はどこまで届くのか」という問いは、建物の物理的な範囲ではなく、建築的な思考や実践が社会のどこまで関われるのかという問いとしても読むことができます。
建築は、完成すると一つの形として残ります。
そのため建築家の仕事は、どうしても「どんな建物をつくったか」で評価されがちです。しかし、建築が実際に社会へ与える影響は、竣工した瞬間だけで決まるわけではありません。
人がどう使うのか。時間とともに場所がどう変わるのか。その建築をきっかけにどんな活動やコミュニティが生まれるのか。
羽鳥氏が設計したコープ共済プラザについて、日建設計は、竣工後も設計者と利用者が対話しながら環境の価値を高め続けていることを紹介しています。建築を「完成された環境」として固定するのではなく、使い手が参加しながら変化していく場所として捉える考え方です。
これは地域づくりにも共通します。
完成形を最初から設計者が決めるのではなく、地域に関わる人たち自身が考え、試し、必要に応じて変える。そのための環境やプロセスを設計することも、これからの建築家の役割になり得ます。
羽鳥氏が建築の専門性を別の領域へ応用してきた事例として知られるのが、「逃げ地図」です。
逃げ地図は、津波災害などの際に、安全な場所までどれくらいの時間で避難できるのかを地図上で可視化し、地域の人たちが話し合うためのツールです。もともとは大規模建築における避難計画の考え方を、地域の防災へ応用するところから始まりました。現在では日本各地で活用されています。
建築家が日常的に扱っている避難動線や人の移動という知識を、一つの建物から地域全体へスケールアップする。
ここにも「建築がどこまで届くのか」という今回のテーマにつながるヒントがあります。
専門的な技術や設計手法は、必ずしも建築物をつくるためだけに使わなくてもいい。別の課題へ置き換えたとき、建築家だからこそ提供できる方法が見えてくるかもしれません。
近年、建築を取り巻く状況は大きく変化しています。
人口減少、既存ストックの増加、地方都市の移動問題、気候変動、防災、コミュニティの変化。新しい建物を設計することだけでは解決できない課題が増えています。
一方で、建築家が身につけてきた能力は、建物の形を考えることだけではありません。
複雑な条件を整理すること。異なる立場の人をつなぐこと。目に見えない課題を図面や模型、図解によって可視化すること。将来の使われ方を想像すること。そして、まだ存在しない状況を具体的な形として提案すること。
そう考えると、建築家が関われる領域は、建物という境界を越えてもっと広いのかもしれません。
今回のセミナーでは、羽鳥氏の近年の実践を通じて、そうした建築家の仕事そのものの広がりを考えることができそうです。
このセミナーは、建築実務者だけでなく、建築に関心のある学生にも開かれています。
建築学生にとって、大学で取り組む設計課題は多くの場合「敷地があり、そこに建物を設計する」という形式です。しかし実社会では、そもそも建物をつくるべきなのか、別の仕組みで解決できないのか、というところから考えなければならない場面があります。
設計者として働いた先に、建築物を設計し続ける以外にどのようなキャリアや実践があるのか。
組織設計事務所で大規模建築を手掛けながら、地域課題、防災、モビリティへと活動を広げる羽鳥氏の実践は、「建築を学んだ先に何ができるのか」を考える材料にもなります。
18:00
開場
18:30〜18:35
開演・講師紹介・講師挨拶
18:35〜20:00
羽鳥達也氏による講演・質疑応答
セミナーは建築CPD情報提供制度認定プログラム・2単位。参加費は無料ですが、定員40名の事前申込制となっています。
・日建設計・羽鳥達也氏の活動に興味がある方
・建築家の仕事の領域について考えてみたい方
・建築を学んでいる学生
・意匠設計に携わる建築実務者
・大規模建築や都市設計に興味がある方
・TOYOTA WOVEN CITYなど新しい都市プロジェクトに関心がある方
・地域課題やまちづくりに建築の専門性を生かしたい方
・Community Driveプロジェクトに興味がある方
・防災や「逃げ地図」の取り組みに関心がある方
・「建築をつくらない建築家の仕事」にも興味がある方
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