踏み出した分だけ、未来の「道」が引かれる

〈2026年8月28日より開催〉企画展「方丈記に学ぶ –生きるを編み直す小さな建築–」

〈2026年8月28日より開催〉企画展「方丈記に学ぶ –生きるを編み直す小さな建築–」

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開催
時期
2026.08.28〜2027.01.11

21_21 DESIGN SIGHTでは、2026年8月28日(金)より企画展「方丈記に学ぶ –生きるを編み直す小さな建築–」を開催します。

13世紀初頭に鴨長明によって書かれた随筆『方丈記』には、移ろい続ける世の無常を前にした人間の生き方が記されています。彼が暮らした庵は現存しませんが、その言葉は時代をこえて度あるごとによみがえり、多くの実践を生み出してきました。文学作品でありながら、住まいの本質を問うものとして、しばしば「真の建築書」とも形容される所以です。

本展は、『方丈記』に記された小さな建築「方丈庵」を起点に、現代の暮らしと構築環境を見つめ直す展覧会です。展覧会ディレクターに建築家・塚本由晴を迎え、建築家、デザイナー、美術家、企業など多彩な参加者が、それぞれの「方丈庵」を構想します。一丈四方(約9㎡)というスケールを手がかりに、素材、構造、道具を介した、生き方を問い直す仕掛けを考えます。

会場では、『方丈記』に描かれた自然やくらしについてのリサーチとともに、複数の庵が展示されます。来場者は会場内を巡りながら、異なる視点で構成された方丈庵に出会うことになります。『方丈記』そのものを読み解くのではなく、『方丈記』と私たちのあいだに現れる生に目を向け、私たちの暮らしとあらためて向き合う機会となることを目指します。

展覧会ディレクター 塚本由晴 メッセージ

塚本由晴 Yoshiharu Tsukamoto
建築家。1965年神奈川生まれ。1987年東京工業大学工学部建築学科卒業。1987〜88年パリ・ベルビル建築大学。1994年東京工業大学大学院博士課程単位取得退学。貝島桃代と1992年にアトリエ・ワンの活動を始め、建築、公共空間、家具の設計、フィールドサーベイ、教育、美術展への出展、展覧会キュレーション、執筆など幅広い活動を展開。ふるまい学を提唱して、建築デザインのエコロジカルな転回を推進し、建築を産業の側から人々や地域に引き戻そうとしている。2022年Wolf Award受賞。

近年、大地震、台風、大火事などの災害が頻発し、現代の都市型社会の脆弱性が顕になっている。これに呼応するように安心安全、国土強靭化の掛け声が大きくなり、日常生活においても管理、監視が強められ、環境はより堅固な構造体に更新されていくが、それにつれて以前はできたこと、楽しめたことができなくなっている。またコメをはじめとする食品、電気などのエネルギーをサービスに依存しきっている生活様式は、将来的には農村の崩壊や、安全保障上の弱点につながることが予想される。こうした不自由や不安に向き合うためには、自分たちでできることを人に任せることに慣れきってしまった生活様式を見直していかなければならないのではないか。

12世紀の京都に生まれ、人生の後半は宮廷やまちから離れて、日野山に建てた方丈庵に隠遁した鴨長明の『方丈記』を読むと、彼の厭世的な気分の背景には、度重なる災害や飢饉、遷都、人間関係のストレスがあり、現代に接続するところが多い。方丈庵を召喚して小さな建築を構想し、いつのまにか産業や制度によって編まれてしまった私たちの生を、もう一度自分たちで編み直すきっかけを掴む試行として、この展覧会を位置付けたい。

本展の大きな見どころ

1. 参加作家たちが構想した現代の「方丈庵」が出現

ギャラリー 2 には、江頭 慎、大室佑介+川長組、小渕祐介+中村 純、2m26、山口 晃の 5 組がそれぞれ構想した現代の「方丈庵」が立ち並びます。実際に内部へ入り体験できるものから、鑑賞を通じてその世界観を味わうものまで、表現のかたちはさまざまです。

また、ギャラリー 1 の入口に田部井美奈、サンクンコートには、正田智樹+竹中工務店+veig による庵が現れます。さらに、須田悦弘による作品は会場内の思いがけない場所にひっそりと佇みます。会場を巡りながら宝探しのように探してみるのも本展の楽しみ方の一つです。

2. さまざまな時代に見られる「方丈」の思想をたどる

ギャラリー 1 では、本展の企画チームが正田智樹と大山 亮、増井柚香子(6lines studio)によるリサーチを元にした展示を展開します。

「方丈記」に記された要素を手がかりに、鴨長明の庵を検証的に再現する空間展示に加えて、「方丈記」が写本や解説・翻訳本などを通じて時代を超えて読み継がれてきた軌跡をたどります。また、これまでさまざまな時代や立場の人々によってつくられ、構えられてきた「庵」をたどりながら、「方丈」という小さな空間に託されてきた思想や哲学に光を当てます。

江頭 慎と、本展展示予定作品(部分)
Photo by David MacSweeney, Founder, 9DASHLINE.
大室佑介+川長組「川崎長太郎の物置小屋再建」(2015年)撮影:若林勇人
小渕祐介+中村 純による庵 模型
撮影:東京大学小渕研究室
正田智樹+竹中工務店+veigによる庵 スケッチ

展覧会チーム プロフィール

田部井美奈 Mina Tabei /グラフィックデザイン アートディレクター・グラフィックデザイナー。2003年より服部一成氏のもとで活動し、2014年に独立、田部井美奈デザインを設立。広告、書籍、パッケージ、展示、空間構成などの領域において、色彩や幾何学を軸に、平面と立体を行き来するような視覚表現に取り組む。主な仕事に「武蔵野美術大学」のイメージビジュアル、「マティス展」、『奥能登半島/石川直樹』『ミライの源氏物語/山崎ナオコーラ』の装丁、「(NO) RAISIN SANDWICH」、「Mame Kurogouchi」のパッケージデザイン、展示「光と図形と、その周辺」など。第28回亀倉雄策賞、’19年東京ADC賞など受賞。AGI(国際グラフィック連盟)会員。

正田智樹 Tomoki Shoda /会場構成 建築家。1990年千葉県生まれ。2014年東京工業大学工学部建築学科卒業。2016-2017年ミラノ工科大学、2017年東京工業大学大学院修了。在学中に日本各地の伝統的なものづくりの工房やイタリアの伝統食の生産の現場を調査。2018-2025年竹中工務店設計部にてオフィスビルや劇場、展覧会の設計に携わり、グッドデザイン賞、JID賞、空間デザイン賞など受賞。2026年独立、東京科学大学大学院博士課程在籍、多摩美術大学非常勤講師。著書にイタリアと日本の伝統食と建築、風景を描いた『Foodscape フードスケープ – 図解 食がつくる建築と風景』がある。人々の暮らしや食文化に寄り添いながら建築を設計する。

大山 亮、増井 柚香子(6lines studio) Ryo Oyama, Yukako Masui (6lines studio) /アーカイブ編集 6lines studioは、大山 亮、片山果穂、笹木 聖、渕野剛史、増井 柚香子、宮崎 陸による建築コレクティブ。千葉県鴨川市釜沼北集落にて一般社団法人「小さな地球」の活動に加わり、方丈のタイニーハウス『滴滴庵』(SDレビュー2023入選)を設計・建設したことを機にグループを結成。都市・農村を横断してフィールドに入り込み、そこで出会う人々や素材・構法から学びを得ながら、これまでの事物の関係性を新たな文脈へとつなぎ直すことで社会の作品性を引き出すことを目指す。他の作品に、『日本橋のイエハニワ』(東京ビエンナーレ2025「スキマプロジェクト」)、『雪待ち囲い』(越後妻有里山現代美術館MonET屋外企画展「ホンヤラドゥー Snow Meeting」)など。本展は、大山 亮、増井 柚香子が担当。

杉本欣久 Yoshihisa Sugimoto /学術協力 1973年京都市生まれ。1998年に早稲田大学大学院文学研究科芸術学科(美術史)専攻修士課程を修了し、同年より公益財団法人・黒川古文化研究所(兵庫県西宮市)に勤務する。同所研究員を経て、2018年より東北大学大学院文学研究科の東洋・日本美術史研究室に准教授として赴任、2024年から教授として研究を続ける。専門は日本近世美術史で、主に江戸時代の画家に関する地域や身分などアイデンティティの差により、どのように絵画表現が異なるのかを研究対象とする。展覧会監修に「東北の画人たちⅠ−青森・秋田・山形編」(瑞巌寺宝物館、2022年)、「東北の画人たちⅡ−岩手・宮城・福島編」(瑞巌寺宝物館、2023年)、著書に『武士の絵画−中国絵画の受容と文人精神の展開−』(中央公論美術出版、2020年)、『鑑定学への招待−「偽」の実態と「観察」による判別』(中央公論美術出版、2023年)がある。

参加作家

江頭 慎 Shin Egashira 建築家、美術家。東京藝術大学卒業後、渡英。ロンドンのArchitectural Association School of Architectureを卒業後、同校にて長年Diploma Unit Masterを務める。近年、RMIT University European Research Practice(PhD by Practice)にて博士号を取得。建築教育を軸に、建築、都市、アートワークの実践を横断しながら活動している。建築は完成されるものではなく、時間の中で場所や人の営みと関わり続け、記憶や文化、風景を運びながら、その変化を映し出し、記述し続けるプロセスであると考えている。都市やランドスケープは絶えず変容し、やがて消えていく。その過程に生まれる曖昧な状態に関心を寄せ、政治経済の波にさらされたポストインダストリアル、ポストアグリカルチャーの風景を観察する。一見すると役割を終えたように見える場所や事物を、建築、オブジェクト、テキスト、インスタレーションとして再構成する。世界各地でのワークショップとフィールドリサーチを通して、都市と終焉のランドスケープを「消えつつある事象」として読み替え、その潜在的な文脈を新たなかたちで立ち上げる試みを続けている。

大室佑介 Yusuke Omuro 建築家。1981年東京都生まれ。2005年多摩美術大学環境デザイン学科卒業。2007年多摩美術大学大学院美術研究科修了後、磯崎新アトリエ勤務を経て、2009年大室佑介アトリエ/atelier Íchikuを設立。2014年三重県津市白山町に移住し、2015年には自宅前の廃工場を改修して再利用した私設美術館「私立大室美術館」を開館。同館館長に就任。2025年から滋賀県立大学環境建築デザイン学科講師。主な建築作品として、写真や文献などの史実と文学作品を照らし合わせつつ、今はなき物置小屋の実態に迫る「私小説家・川崎長太郎の物置小屋再建計画」(2008年〜)、内装の改修を中心とした「Raum」シリーズ(2009年〜)、新築の建物を中心とした「Haus」シリーズ(2010年〜)、時間とともに増殖する美術館群の「私立大室美術館」(2015年〜)などが継続中。

川長組 Kawacho-Gumi 詩人・小説家の平出 隆(1950年生まれ)、建築家の青木 淳(1956年生まれ)、大室佑介(1981年生まれ)、近代文学研究者の齋藤秀昭(1971年生まれ)で構成される研究ユニット。20世紀の日本を代表する私小説家である川崎長太郎(1901年〜1985年)が、36歳から56歳まで20年間の長きにわたって寝起きし、日常生活と執筆活動の拠点とした小田原の海辺に建てられた物置小屋について、残された写真、証言、そして川崎長太郎の私小説作品の中で頻出される文学表現を基にしながら、いまは無き物置小屋の再建を目指す。2015年に小田原文学館で行われた「没後30年特別展 川崎長太郎の歩いた路」では展示計画と会場構成を担当し、会場内にて川崎長太郎の物置小屋(部分)を原寸大で再現することに成功した。

小渕祐介 Yusuke Obuchi 東京大学大学院工学系研究科建築学専攻准教授。トロント大学、ロサンゼルスのRoto Architects設計事務所勤務を経て、SCI-ARC卒業。プリンストン大学大学院修士課程修了後、ケンタッキー州立大学、ニュージャージー州立工科大学、ハーバード大学、プリンストン大学、香港大学、トロント大学で客員講師を歴任。AAスクールデザインリサーチラボディレクターを務め、2010年より現職。専門は建築設計・コンピューテーショナルデザイン。世界の先端のコンピューテーショナルデザインを日本に導入し、プログラミングや3Dモデリングを駆使したデジタルファブリケーションを研究。これまでの研究プロジェクトは、ニューヨークのクーパー・ヒューイット・デザイン美術館、パリのポンピドゥー・センター、チューリッヒ・デザイン美術館などで展示され、2021年のヴェネツィア・ビエンナーレではデジタルファブリケーションシステムデザイナーとして金獅子賞を受賞。

中村 純 Jun Nakamura 建築家。1963年大阪生まれ。1987年京都大学工学部建築学科卒業。1989年京都大学大学院修士課程修了。同年、大林組設計本部に入社。2026年より設計本部長。これまで2010上海万博パビリオン、2020東京オリンピック施設等のスポーツエンターテインメント施設、大学病院、外資系IT企業研究所など、多岐にわたるジャンルのプロジェクトを担当。グッドデザイン賞受賞、日本建築学会選集選出。現在、建築界が直面する、熟練技術者の減少、脱Scrap and Build、Eco Consciousといった状況下で、建設会社の巨大設計組織による、つくり方からデザインする新たな設計手法を模索中。2013年東京大学T-ADSプロジェクト、2024年「坂野正明とQUMA DESIGN WORK展 – 建築模型の冒険 -」展企画等にも参画。

竹中工務店 TAKENAKA CORPORATION 竹中工務店は、400年以上の歴史を持つ総合建設会社。「最良の作品を世に遺し、社会に貢献する」を経営理念のもと、ランドマークとなる数多くの建築を手掛けてきた。手掛けた建築物を「作品」と位置づけ、作品づくりを通じた活動は国内外へ、また建築の枠を超えて、豊かで安心な「まちづくり」へと広がっている。近年は、脱炭素、資源循環、自然共生を調和させ、地球の恵みを回復・再生し、創造性豊かに暮らす社会をつくる取り組み「リジェネラティブ・ワークス」を進め、ウェルビーイングな未来の創造を目指している。本展では、竹中工務店設計部で「住まいのかたち」と向き合う3人、亀田鈴香、小浦幸平、片山 遥が、鴨長明の「方丈庵」を現代に読み替える。「住まいとは何か」「建築とは何か」「豊かに生きるとは何か」という問いを起点に、変化する時代における新たな生き方を提示する。

veig veigは曖昧な様を表す”vague”に由来し、生態系の境界で起きている様々な事象から着想を得ながら探索性や鑑賞性など多様な見方を動的に取り入れるユニットである。生態系など様々な空間における関係性を捉え、主に造園やランドスケープデザインで表現を行う。見えない関係性や多様な視点の相互作用を探求し、対話を通じて共通の言語を模索しながら、異なる専門性を持つメンバーと協働し、学術的な調査から空間の設計、施工、コンサルティングまで包括的に手がける。

須田悦弘 Suda Yoshihiro 美術家。1969年山梨県に生まれ。1992年多摩美術大学グラフィックデザイン科卒業。1993年から木で植物を掘り、彩色しそれを空間の中に置き周りの空間も作品の一部としたインスタレーションで制作・発表をしている。主な展覧会に「Garden Eden」(ミュンヘン州立版画素描館、2025年)、「須田悦弘展」(渋谷区立松濤美術館、2024年)、「ミテクレマチス」(ヴァンジ彫刻庭園美術館、2018年)、「花|非花」(毓繡美術館、台湾、2017年)「特別展『茶の湯』」(東京国立博物館、2017年)、「Jardins」(グラン・パレ、パリ、2017年)、「須田悦弘展」(千葉市美術館、2012年)、「ハラドキュメンツ6:須田悦弘 泰山木」(原美術館、1999年)など。

2m26 ドゥー メートル ヴァンシス 京都を拠点とする建築・施工スタジオ。メラニー・ヘレスバック、セバスチャン・ルノー。建築家、1989年、1982年、フランス生まれ。2012年、2006年にナンシー国立建築学校を卒業。2002年より設計、制作活動を開始。2015年に「2m26」スタジオを設立。家具や住宅、ワークショップからパフォーミングアーツに至るまで、建築を「ともに生きるための道具」として捉えながら活動している。

山口 晃 YAMAGUCHI Akira 1969年東京生まれ、群馬県桐生市に育つ。96年東京藝術大学大学院美術研究科修了。日本の伝統的絵画の様式を用い、油絵という技法を使って描かれる作風が特徴。現代社会の風景としての都市鳥瞰図・合戦図などの絵画のみならず立体、漫画、インスタレーションなど表現方法は多岐にわたる。パブリックアート、新聞小説や書籍の挿画・装画など幅広い制作活動を展開。2013年『ヘンな日本美術史』(祥伝社)で第12回小林秀雄賞受賞。2025年初の漫画雑誌連載作品『趣都』(講談社)を刊行。近年の国内の個展に、2021年「山口晃 – ちこちこ小間ごと -」(ZENBI – 鍵善良房 – KAGIZEN ART MUSEUM、京都)、23年「ジャム・セッション 石橋財団コレクション X 山口晃 ここへきて やむに止まれぬ サンサシオン」(アーティゾン美術館、東京)等。2023年ニューヨークのメトロポリタン美術館に作品が収蔵される。

開催日時
2026年8月28日〜2027年1月11日
参加費
一般1,700 円 / 大学生800 円 / 高校生 500 円 / 中学生以下無料
会場
21_21 DESIGN SIGHTギャラリー1&2
開催形式
対面
締切
2027年1月11日 18:30

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