1990年株式会社リクルート社入社、2005年よりリクルート住宅総研。2013年3月にリクルートを退社。同年7月、株式会社LIFULL(旧株式会社ネクスト)に設置された社内シンクタンクLIFULL HOME’S総研所長に就任し、独自の調査研究レポートを元に「住」領域の情報発信及び提言活動に従事。
一般社団法人リノベーション協議会発起人・エグゼクティブアドバイザー、内閣府地方創生推進アドバイザーほか、国土交通省、地方自治体、業界全体のアドバイザー・委員を歴任。
建築学科で学ぶ多くの学生や建築家は「建築そのものが偉大な作品である」と考えがちです。
しかし、これからの時代、デザイン性だけではビジネスとして生き残れません。
現在、日本は人口が減少し、空き家が900万戸に迫る深刻な状況にあります。それにもかかわらず、新築住宅が次々と建てられています。
たとえば、5000万円で新築の建売住宅を買っても、20年後にはその価値が大きく下落します。借金をしてまで「将来値下がりが確定している資産」を買うのは、株式投資であればあり得ない不合理な行動です。人口減少社会において、これまでのように新築を建てて壊す「スクラップ&ビルド」のビジネスモデルはすでに限界を迎えており、既存の建物を活かす「リノベーション」へ舵を切るしか生き残る道はないのです。
リノベーションとは?
①建物単体の改修としてのリノベーション
建物そのものの改修、つまり既存ストックに手を入れる行為を指す。これは、古い建物を機能的に、或いはデザイン面で刷新することを意味する。
②エリアや都市の再生という視点
一方で、エリア全体や都市の価値を高めるためのリノベーションという考え方もある。この場合、既存ストックに限らず、新築の建物を配置することによってもエリア全体の機能性や魅力を向上させる手段として捉えられる。
リノベーションにおいて重要なのは、建物をただ表層的にかっこよく直すことではありません。
LIFULL HOME’S総研の島原氏は、「建築はあくまで手段であって、目的ではない」と断言します。図書館の目的が市民に図書を提供することであり、商業建築の目的が事業の利益を生むことであるように、建築は「活用」されて初めて価値を持ちます。 彫刻のような芸術作品として終わらせず、事業として成立させるために不可欠なのが「土地・立地のリスク判断」「不動産マーケティング」「金融や投資の知識」という3つのビジネススキルです。どんな住まいをどの価格帯で売り出せば購買層に受け入れられるか、将来の資産価値をどう維持するか。金融の基礎や不動産の知識があって初めて、あなたのデザインが社会で機能し、真に価値ある空間へと変革できるのです。

では、その総合的なビジネススキルをどこで発揮するべきでしょうか。今、最大のビジネスチャンスが眠っているのが「戸建てリノベーション」です。 実は、日本の全住宅ストックのおよそ8割が一戸建てであるにもかかわらず、市場で流通する中古住宅の約半分はマンションに偏っています。つまり、全国には「手つかずの戸建て」という圧倒的な数のブルーオーシャンが存在しているということです。
住み手のいなくなった戸建てが投資もされず放置されている現状こそが空き家問題の根本であり、ここを資産化できれば巨大な市場が動きます。もし建築業界がこの戸建てリノベ市場に舵を切らなければ、業界全体が人口減少以上のスピードで衰退してしまうと危惧されています。逆に言えば、街づくりの視点を持ち、この未開拓市場に挑む者には、無限の可能性が広がっているのです。
これからの建築パーソンに求められるのは、優れた設計技術に「ビジネスの視点」を掛け合わせることです。建物を単なる作品として捉えるのをやめ、社会や日本経済の中で価値を生み出し続けるための「手段」として捉え直してみましょう。 住宅をただ「買って住む」だけでなく、長期的な資産形成として考える視点を持つことで、あなたの提案の幅は劇的に広がり、キャリアの可能性も飛躍します。
本記事のより詳しい島原氏のインタビューや、最新の市場動向をまとめた『STOCK & RENOVATION 2024』に関する議論は、ARCHIES Vol.3でたっぷりお読みいただけます。

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